リウマチの天使スケリグ
「肩胛骨は翼のなごり」/デイヴィッド・アーモンド
- 作者: デイヴィッドアーモンド,David Almond,山田順子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2009/01/22
- メディア: 文庫
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「ねえ、肩胛骨って、なんのためにあるの?」ぼくは訊いた。
「まあ、マイケル!」かあさんはいらだったように、ぼくを押しのけて通った。だけど、階段を途中まで降りたところで足を止め、またもどってきた。
そしてぼくの肩胛骨に沿って指を走らせた。
「肩胛骨は、人間が天使だったときの翼のなごりだといわれてる。いつかある日、またここから翼が生えてくるって」
「だって、それ、ただのお話でしょ。ちいちゃい子ども向けのおとぎ噺。そうでしょ?」
「さあね、それはどうかしら?かつて、あたしたちはみんな、翼を持ってたのかもしれない。そして、いつかある日、また、翼を持てるかもしれない」
「星の王子さま」に次いで、私のバイブルになった児童書です(こういう小学校高学年向けくらいの児童書は、グッとくるものが多い気がする)。
原題は邦題と違って、"SKELLIG"、登場する謎の男の名前です。それを「肩胛骨は翼のなごり」にしたの、ホント天才だと思う。少なくとも私の中では、肩胛骨という単語にまつわるストーリーはこれしか浮かばない。肩胛骨って結構ニッチな部位だよね…?
主人公マイケルが、引っ越し先にある朽ち果てて今にも崩壊しそうなガレージの奥で、翼を持つ謎の男を発見するところからストーリーは始まる。
この謎の生き物スケリグの素敵なところは、汚さと美しさ、現実感と非現実感が絶妙なバランスで入り混じっているところ。
スケリグは、登場してすぐの頃ほど汚さや生々しさが際立つ書かれ方をしている。老人みたいな見た目で、みすぼらしく、埃まみれで汚くて、無愛想で、病気で苦痛にうめき、食べているものといったら虫や鼠。ペレット(猛禽類が骨や羽など消化できないものを吐き出した塊)を吐いたり、フクロウに餌を運んでもらってる描写があるあたり、鳥獣の擬人化に近いものなのかな…?と思わせる(隣に住んでいる女の子ミナが、進化論に触れて「(猿ではなく)もう少し美しいご先祖さまもいたらいいなと思う」と言ってるから、始祖鳥から進化した鳥人とかの可能性も匂わせる)。けれども、着ているスーツの下に固く折り畳まれた病んだ翼、それが露わになる描写ひとつで、あ、やっぱり天使かもしれない、と思わせるから不思議だ。折り畳まれこわばった翼がゆっくりとほどける瞬間、彼の生々しさは人間や動物と同じ「生き物」として、「生きた天使」の不思議な親近感と親愛の情で読者を包み込む。
スケリグは最後まで、自分が何者か断言することはない。
「あなたはなに?」
スケリグはまた肩をすくめた。
「なにか、だよ。きみみたいな、獣みたいな、鳥みたいな、天使みたいな、なにか」
彼は笑った。「そういうなにか、だな」
天使っていうのがそもそも比喩的な表現ではあるけど、翼がある/ないっていう表現は、色々な物事の比喩として捉えることができますよね。可能/不可能とか、非現実/現実とか、過去/未来(前世や死後という意味で)とか、無垢/老獪とか。そういう様々なものを投影できるから、大人が読んでもグッとくるんでしょうね…。想像力を思いっきり働かせる余地が作られているというか。
そういったファンタジックな要素だけでなく、現実の人間関係、特に家族関係も緊密に描かれている部分が泣けました。マイケルには、産まれたばかりの病弱な妹がいます。入退院を繰り返す赤ちゃんに不安を抱える家族。ラスト近くで、その妹とスケリグの一瞬の邂逅があるのですが、そこで見事に全てが噛み合うので感動してしまいます。安堵と切なさとぬくもり、そして「生きるっていうのは手段じゃない、大きな目的なんだなあ…」と私らしくもないことを考えてしまったりしました。
スケリグは「星の王子さま」の王子さまと同じように、最後は主人公達の元から去ってしまうんですよね。墜落した天使が、人間の愛情に癒され力を取り戻し、天に帰っていく。うーんやっぱり星の王子さまとプロット似てます。人の形をした人ならざる儚いもの、っていうテーマが私のツボだとわかりましたので、映画でも小説でもおススメがありましたら教えてください。AIと人間みたいなやつも好きです。
読もうと思った理由はこれ
blood,sweat&tearsのPVのテテ。
こんなん思い出さないわけにはいかないでしょ、、、
そして、私が大好きなAwakeの歌詞。
Maybe I, I can never fly
あの花びらのように 翼が付いたように舞うこともできないMaybe I, I can't touch the sky
それでも手を伸ばしていたい走ってみたいんだ もう少し
私が好きなもの、わかりやすすぎるな〜